大人の女性はかしこく食べなさい(前編)「食べ物で体の質が決まる」

食とカラダのプロフェッショナル 植木もも子先生に聞く

健やか料理研究家・管理栄養士・国際中医師・国際中医薬膳管理師・遼寧中医学院・日本校薬膳講師・ウェルエイジ料理教室主宰

 

いつまでも若々しくきれいでありたい。心身ともに健やかでありたい。女性ならだれでも願っていることではないでしょうか。そのために大切なのは、「食」であることは言うまでもありません。毎月、RED FROGS JOURNALでその季節に合った「女子力上げる女性に優しい季節のスープ」レシピをいただいている植木もも子先生に、薬膳料理研究家および中医師の立場から、大人の女性が「食」において気をつけるべきことを伺いました。

 

野菜をしっかり摂れていますか?

私たちのカラダは、約37兆個の細胞でできているといわれています。肌も、筋肉も骨も、内臓も血液も、みんな細胞でできていて、それらの細胞がうまく働いてこそ、私たちは毎日元気に過ごすことができるのです。ここで大切なことは、細胞の1つ1つは、私たちが毎日食べたものでできているということ。私たちが日々何を食べるかで、細胞の質に大きな差が出るのです。

今は、便利な世の中になって、いつでもどこでも手軽におなかを満たすことができる時代です。みなさんも毎日忙しいと、つい外食やコンビニやデパ地下で買ってきたもので済ましてしまいがちではないでしょうか。

そういった食生活で気をつけなければならないのは、まず、野菜が不足しがちになることです。肉料理やパン、めん、ご飯ものなど、たんぱく質や炭水化物は外食や買ってきたもので摂りやすいのですが、下ごしらえに手間がかかる野菜類はそう簡単ではありません。サラダなどでモリモリ食べているつもりでも、生野菜だけではほとんど摂れていない。とくに青菜やにんじん、かぼちゃなど色の濃い野菜は摂れていませんね。果物もあまり摂れていません。

野菜や果物は、ビタミンやミネラル、食物繊維のほか、老化や生活習慣病、がんなどの予防に役立つとされている抗酸化物質を含んでいます。季節の野菜や果物を十分に食べることは、細胞を元気にし、健康を維持するためにはとても重要なことなのです。

だから野菜や果物を毎日しっかり食べていただきたいと思います。

加工食品も便利でおいしいものがたくさん出ています。忙しいときは頼りになりますね。ただ、気をつけていただきたいのは、加工された食品には、塩分や糖分などの調味料がどれくらい入っているかわからないことです。これらの食品は、一口食べてすぐ「おいしい!」と感じられる状態にしてあります。そのために塩分や糖分の濃度が高いものが多いのです。

とくに塩分の摂りすぎは、塩の主成分であるナトリウムの血中濃度を高めます。ナトリウムを薄めるために水分を補い、血液量が多くなります。すると、血管壁にかかる圧力が高くなって高血圧を招きます。高血圧は血管を傷め、心臓に負担をかけるだけではありません。血管が痛むと、肌に栄養が届かなくなり、肌の衰えにもつながります。ですから、なるべく塩分を控えめにすることも、大人の女性にとっては(女性に限ったことではありませんが)大切なポイントです。

塩分を減らすためにも、なるべく手作りのものを食べていただきたいと思います。家で料理すれば、外ではとりにくい野菜もたっぷり摂れます。薄味でもおいしい料理が楽しめますし、野菜に含まれるカリウムや食物繊維は、カラダに入ったナトリウムを排出してくれます。

もう一つ知っておいていただきたいのは、年齢を重ねていくと内臓も年も取るということ。消化能力も落ちてきます。すると、食べ物に含まれている栄養素が、若いときほど吸収されなくなる。消化能力を助けるために、よく噛んで食べることがとても大切になってきます。とくに繊維が強くかたい野菜は、細かく刻んだり、ミキサーにかけてポタージュにしたりして食べるなどの工夫もしたほうがいいですね。

また、胃腸の働きが弱っている人は、栄養を十分に吸収することができません。胃もたれや胸やけ、食欲不振、下痢や便秘などを起こしやすい人は、胃腸の調子を整えることが大切です。不規則な生活や偏った食事などにも気をつけましょう。

 

食べ物からいただくのは「生命力」

動物は生きているものから生命をもらって生きています。人間も動物ですから、ほかの生き物の命をいただいて生命を維持しています。薬膳を勉強したとき、食べ物からいちばんいただかねばいけないのは「生命力」であることを教わりました。生命力のないもの、つまり加工しすぎたものではなく、太陽と土からエネルギーを得たものを食べなさいと。畑でとれたものや木に成ったもの、それもできるだけ新鮮なものを食べたほうがよい、とも教わりました。つまり食べ物がもっている生命力、薬膳でいうところの“気”が大事ということです。“気”とは、生命活動を営むエネルギー。生命力に満ちたものを食べて、“気”を補わないと、私たち自身の“気”も補えないということですね。

薬膳では、季節ごとに養生しなければならないことがあります。その季節の養生に必要なものは、その時季にとれる果物や野菜を食べることで補うことができます。

例えば秋。乾燥するうえ、夏にいっぱい汗をかいて体の中の水分も減っているので、水分の豊富な梨やブドウなどを食べることで乾きを癒やせます。また、柿は体を冷やしますが、ビタミンCやカロテンを多く含むので、ほどほどに食べることでかぜや寒さに対する抵抗力をつけることができます。また、新米や、里いも、じゃがいも、さつまいもなどのいも類がたくさん出回ります。季節のものは生命力に満ちているので、しっかり食べることで寒い冬に備えることが大切なのです。

ただ、今は野菜に含まれる栄養価も減ってきていて、野菜の味も香りも少なくなっていますね。食品成分表の栄養価も昔と随分変わってきています。できれば、ちゃんと耕していい肥料を入れた健康な土壌で、太陽の恵みを受けて、その季節にその風土に適した方法で育てられたものを食べたいものです。

また、農薬などはできるだけ体に入れたくないですね。なるべく無農薬のものを選びたいところですが、手に入らないときはよく洗ってから使ってください。農薬は水溶性ものが多いので、洗えば水に溶け出すといわれています。気になるときは、30分くらい水に浸けておくとよいでしょう。

ところで、実際に家で料理をするとなると、毎日違うメニューを作らなきゃと考える方が多いですね。忙しいなか、そんな余裕はないし、続きませんよね。私は、同じものを2日続けて食べてもいいし、同じ食材をまとめて下ごしらえして3日間くらい食べてもかまわないと思っています。飽きないように、ちょっとアレンジするなど、かしこく手を抜きながら、不足しがちな栄養を摂るようにしてみたらどうでしょうか。

 

調味料にこだわってみませんか?

私が調理をする際に気をつけているのは、油と調味料はなるべくいいものを使うということです。

油については、私は、まず製法をチェックして、化学薬品で抽出した油ではなく、圧搾して抽出した油を選ぶようにしています。

油の種類は、新しい商品や情報が次々に出ていますが、自分に必要なものを選び、商品に合ったとり方をすることが大切だと思います。

私は、以前はオリーブオイルを使うことが多かったのですが、今は日本人に合うといわれる米油をよく使っています。米油は米ぬかを搾った油で、抗酸化作用をもつビタミンEが豊富に含まれています。

美容や健康、老化予防に欠かせないといわれる“オメガ3脂肪酸”も重要な油です。オメガ3は、新鮮な魚のほか、いま話題の「荏胡麻(えごま)油」や「亜麻仁(あまに)油」に多く含まれていますが、酸化しやすいので、注意が必要です。酸化した油は毒性をもってしまうため、遮光瓶に入った、容量の少ないものを買って冷蔵庫で保存し、なるべく早く使い切るようにします。加熱料理に使うのもNGです。私は最近「インカインチオイル」を使っています。この油はビタミンEを多く含むので、加熱しても大丈夫です。クセがなく、食べやすい油です。もっと食べやすい油なら「ヘンプオイル(麻の実油)」があります。ただし、これも酸化が速いので加熱調理には使えません。

料理に使うお酒は、塩入りの「料理酒」ではなく、ちゃんと飲める「醸造酒」をおすすめします。あるシェフから「飲んでおいしくないものを入れてもおいしいものができるわけがない」と聞いたことがあります。安価な料理酒には塩が入っているので、知らない間に塩分を摂っていることになります。使うのはいちばん安い日本酒でいいんです。日本酒はアミノ酸が豊富なので、肉や魚にかけるとクセはとってくれるし、うまみがアップします。私は和洋中どんな料理にも日本酒を使っています。洋食でもまったく問題ありません。ワインで香りづけすべきところはワインを使いますが、下ごしらえは全部日本酒で大丈夫です。

砂糖は、白い砂糖から黒砂糖までいろいろな種類のものが売られていますね。なるべく白い砂糖ではなく、精製度の低いミネラル豊富な茶色い砂糖を選ぶとよいでしょう。蜂蜜を使うのもおすすめです(1歳未満の赤ちゃんにはあげないでくださいね)。

 

流行りの食も、自分の頭で考えて

今の女性たちは美容や健康への関心が高い方が多いですね。でも、流行っているからと飛びつく前に、自分に本当に合っているのか、よく考えて実践することが大切だと思います。

たとえば、流行の酵素ドリンク。年齢とともに酵素が減少すると宣伝されていますが、普段の食事で簡単に補うことができます。例えば大根やカブにはデンプン消化酵素のアミラーゼが入っています。ごはんと一緒に大根やカブのサラダや大根おろしを食べたり、納豆に大根おろし入れて食べたりすることで補えるのです。日本人は、昔はこんなふうに自然にバランスよく食べていたのです。食の欧米化とともにこういった知恵が忘れられているのは残念なことです。

また、凍らせた野菜や果物をミキサーにかけて飲むスムージーは、健康に役立つ食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノール類も手軽に補給できるとあって、大流行しました。ただ、スムージーはアメリカ発祥のものです。アメリカ人なら冷たいスムージーを年中飲み続けても問題なくても、日本では体調をくずす人が少なくありません。乾燥したアメリカと湿気の多い日本では風土が違うし、そこで暮らすアメリカ人と日本人は体質が全く違います。とくに日本人が寒い季節に冷たいスムージーを飲むと、胃腸が冷えて消化吸収がうまくいかなくなりやすいのです。胃腸を温めるために体はエネルギーを消耗することになり、手足が冷えるだけでなく、脳に十分なエネルギーが届かないことになります。例えばほうれん草は、薬膳の考えでは体を冷やすので、冬にスムージーにして飲むのはおすすめではありません。とくに冷え性の人はやめたほうがよいでしょう。どうしても飲みたい人は、軽く温めて飲むか、先に温かい飲み物で胃腸を温めてから飲むなど工夫が必要です。

スムージー自体は悪いものではありません。季節に合った食材を選ぶとか、体を冷やさない工夫をするとか、考えて取り入れることが大切だと思うのです。

健康のために取り入れたものが、役に立たないどころか、体をこわしてしまうほど残念なことはありません。自分の健康を守るためには、とくに何か流行りのものをとり入れるときは、メディアのさまざまな情報に踊らされず、「食」において何が大事かという本質を見失わないようにしたいですね。これは、そんなに難しいことではありません。まずは季節の野菜や果物をしっかり食べることにつきると思います。

(後半に続く)

「大人の女性はかしこく食べなさい。(後編)」はこちら

「植木もも子先生の女性のバランスを整える優しい薬膳レシピ」はこちら

 

植木もも子先生プロフィール

東京家政学院大学卒業後、岸朝子氏に師事し、料理記者として活動。
その後和食料理研究家の鈴木登紀子氏のアシスタントを経て、フードスタイリストとして雑誌の連載、CMなどを手掛けるほか、大学の非常勤講師としても活躍。
現在、管理栄養士、国際中医師、国際中医薬膳管理師の資格を持ち、培った知識と持論を生かした数々の著作本を出版している。また最近は講演や料理教室、テレビ番組の出演などを通して、毎日の食事の大切さを伝えながら「美味しく、楽しく、賢く、健康に」をモットーに健やか料理研究家として活動中。ファイトケミカル(植物由来の化学物質)パワーを取り入れた中医営養学、雑穀料理を中心に日々の料理を提案している。

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